出 自
堀場康一
ある作家が名誉ある賞の受賞講演で
「あいまいな」日本について語ったことがある
ぼくはその名指しされた国にいて
あいまいでない日本を雪崩のように感じ続けている
一方その作家は家族と共に
障害のある息子を立派に育て上げたことを
ぼくは知っている
この テレビ塔の天辺から
ハンググライダーで飛び降りるような
えもいわれぬ落差にぼくは取り憑かれて
一年越しの頭痛をわずらい
おのれの出自を問い質してきた
やがて冬眠から覚めた時ぼくは
他人や他物をもっともらしく評する人びとに
おごそかに問いかけよう
あなたはあなたの出自をもう乗り越えましたか
と
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