場   面

堀場康一


門の向こうからうつむき加減にあらわれて
やさしく微笑むあなたと
ひとしきり言葉を交わしたあとで
久しく淀んでいた思いが氷解しはじめ
景色がこぼれそうになりながら
ひとめぐりする時代
ぼくは水面をさまよい
おぼろげな記憶が満ち干をくりかえす
信じられるあてはないのに
手離すことが怖かった日々
通り過ぎる影にさよならを言い
清水で心を洗い流し
はじめて目を開いた赤子のように
あなたのいる町にそっと繰り出す
器用なふるまいとはいかないが
あなたと沢山キャッチボールをしたいから
大空に向かってスタートダッシュ



(1995/04/29, 2001/10/01)




 詩集『記憶のサラダボール』目次

 Copyright (c) Koichi Horiba, 1995