フィフティー


堀場康一



五十の川を渡るのがこんなに早いとは
思いも寄らなかった
もっと先だとたかをくくっていた
夢の回廊で道草しているあいだに
いつのまにか辿りついた半世紀
長いのか 短いのか
よくまあここまで来た
という感慨もあれば
まだほんの入口さ
という予感もある

最終電車に乗り遅れたサラリーマンのように
心のひきだしは後悔が詰まっているが
どんな時代にめぐり合わせても
フィフティーフィフティーの人生をキープしよう
というさりげない思いが
ぼくの運動神経を刺激する
日の暮れた町をスニーカーで散歩しつつ
星空のかなたに垣間見る
百万の太陽
ぽっかりあいた四次元のトンネル

あした目が覚めたらぼくは
一千年の未来からの誘惑にのって
仄白くかがやくアスファルトの海へ
ボートを漕ぎ出そう
心が水面のように揺れていた
十代の終わり頃
葉山の海風にあやつられて
ヨットの部活に明け暮れた
もどかしくあどけない日々を
春色のチョークで大空に落書きしながら


(2000/03/27, 2005/07/12)



「フィフティー」の英語版は ここをクリック (English)

詩集 水平線 目次

Copyright (c) Koichi Horiba, 2000