三重奏
堀場康一
思案
愛した記憶が心を行き来することはあるが
愛された記憶は朝靄にかすんでいる
ぼくの要領がわるいのは認めるが それより
相手の心を推し量れなかったのがさびしい
要領のわるさは言い訳にならない
何度愛を学習しても
無邪気な自分にあたふたとして
いたずらに時間が過ぎていく
幕間
愛が先か お金が先か
恋愛相談はきょうもかまびすしいが
職も貯金もないぼくは
どうやら発言権に欠けるらしい
そんなとき線路を見下ろす橋の上で
きらきらした夜景を眺めながら
いい風に吹かれていたい
きっと心がまろやかになるだろう
期待
目をあくと
あなたの瞳がまぢかに輝き
目をとじると
あなたのぬくもりが心に伝わる
そんなあなたと
めぐり合う日を思い描いて
シューズの靴紐を結びながら
ぼくは朝のランニングのリズムを整える
(2001/12/26, 2005/07/31, 2009/07/17)
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