ボクサー
堀場康一
リング上でゴングが鳴り響くと
声援と歓声が一面にこだまし
はらはらわくわくいらいらひやひやしながら
十人十色の表情が犇めき合う
二〇〇二年三月九日
東京・九段下 日本武道館
WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ
八千人の観衆を前にして
世界チャンピオン
セレス小林は
ベネズエラの挑戦者
アレクサンデル・ムニョスの
強烈なパンチに耐え抜き
四度倒れて四度立ち上がった
右ストレートで五度目のダウン
ついにキャンバスに沈み
8回1分31秒 TKO負け
力を尽くしたボクシング
敗れたチャンピオンにとってこの試合は
終わりからの始まりにちがいないが
戦い抜くことで男は二歩も三歩も踏み出した
これほど執念をあらわにした戦いを
きみは挑んだことがあるか
おのれの手で未来を切り開く心意気を
きみは持ち合わせているか
壮絶なタイトルマッチのあとで
リング上のボクサーの闘志が
ぼくの脳天にしきりにジャブを浴びせかける
2002/04/22, 2005/02/09
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