冬の月
堀場康一
冬の月が天空に冴えわたるころ
詩人の訃報をたずさえて
北風がさらりと吹き抜けた
何かを失ったようであり
何かを感じたようであり
何かが残されたようでもある
ぼくは生きている者として
意地を張り
元気そうに振る舞い
月の背後で夜間飛行を試みる
すると月は振り向きざまに
ぼくの軟弱な操縦法を揶揄する
煮え切らない雑煮のように
ぼくの進路は不透明だが
ぼくには呼吸する理由がある
ぼくには歩行する理由がある
月の前でぼくが宙返りすると
冬の月は人懐こく語りかけた
付記
詩人 吉原幸子さんが平成14年11月28日に逝去されました。心からご冥福をお祈り申し上げます。詩「冬の月」にその追悼の意を込めてみました。
なお追悼文を日記に認めました。合わせてご一読下さい。
⇒
「吉原幸子さん追悼」2002/12/15付 日記
2003/01/28
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