メッセージ

堀場康一



船が波止場を出るように
ぼくの心が動きはじめる
波のあいだに見え隠れする光景が
ぼくの心をくすぐる
それは土色 あるいは
銀色かもしれない
悠然としたメロディーが
激しいメロディーと
競い合い
やがて大きなうねりとなって
大海を滑走する

かつてあったものが
いまも確実にあるわけではない
何もないところから
一挙に始まるわけでもない
ひとつひとつ地道に
ひとつひとつ丹念に
積み重ねよう

静かさは美徳ではない
騒々しさが望まれるわけでもない
赤子をあやすように
ピアノを調律するように
ひとつひとつ地道に
ひとつひとつ丹念に
態度で表そう

それがたぶん
生きつづけるちから
未来へつづく道
つきないぼくの思い
きみへのメッセージ


2004/10/27


詩集 水平線 目次

Copyright (c) Koichi Horiba, 2004