日常神話

堀場康一



目覚まし時計のベルを止め
目をさましベッドから起き出す
ランニングの用意をし
カップ一杯のお茶を飲み
飴玉を頬張って
夜明けの町へ飛び出す
きょうは東のほうへ駆けて行こう
シャッターの下りた行きつけの古書店
仕込みで忙しいパン屋を通り過ぎ
二十四時間オープンの
ガソリンスタンドを横目に見て
どうやら瑞穂公園へ辿り着く
陸上競技場前の
スポーツ掲示板を眺めていると
自転車に乗った守衛のおじさんに
おはよう と声を掛けられ
ぼくも
おはよう と答える
うまく挨拶できると
気分が晴れる
ささやかな喜びをかみしめ
ふたたび走り出すと
山崎川沿いの公園から
ラジオ体操のアナウンスが流れる
太古の時間がくりかえし
ぼくらの日常神話が始まる


2004/11/13


詩集 水平線 目次

Copyright (c) Koichi Horiba, 2004