日常神話
堀場康一
目覚まし時計のベルを止め
目をさましベッドから起き出す
ランニングの用意をし
カップ一杯のお茶を飲み
飴玉を頬張って
夜明けの町へ飛び出す
きょうは東のほうへ駆けて行こう
シャッターの下りた行きつけの古書店
仕込みで忙しいパン屋を通り過ぎ
二十四時間オープンの
ガソリンスタンドを横目に見て
どうやら瑞穂公園へ辿り着く
陸上競技場前の
スポーツ掲示板を眺めていると
自転車に乗った守衛のおじさんに
おはよう と声を掛けられ
ぼくも
おはよう と答える
うまく挨拶できると
気分が晴れる
ささやかな喜びをかみしめ
ふたたび走り出すと
山崎川沿いの公園から
ラジオ体操のアナウンスが流れる
太古の時間がくりかえし
ぼくらの日常神話が始まる |
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