テークオフ(離陸)

堀場康一



思い出のなかに生きたいとぼくは思わない
生きて思い出をつくりたいとぼくは思う
これまでの思い出より
もっとたくさんの思い出を
これからつくるつもりで
ぼくは暮らしている
もどかしさも ものたりなさも
よろこびも かなしみも さびしさも
みんな大きな風呂敷に包んで
そっと心の押し入れに仕舞い込んで
いまがあり
明日があり
その先に
ぼくらの未来がある
光と影に包まれた
果ての見えない人生で
かけがえのない思い出を
ひとつひとつ
たくさん
つくるために
心をひらいていよう
心をときめかせていよう
シュークリームのようにやわらかな心でいよう
そして
ぼくらの明日へきっと離陸しよう


2005/01/31, 2005/06/20


詩集 水平線 目次

Copyright (c) Koichi Horiba, 2005