アップアンドダウン

堀場康一



風がぼくの心にしみわたる
なにかをはじめなくてはいけないのに
なにもはじめられない はじまらない
息苦しいわけではないが
ひりひりと心が痛む
母の顔を眺めていて
申し訳ない気持ちになる

言葉遊びをしているわけではないが
なにもはじめられないことが
なにかのはじまりではないのか
だとすればぼくも
気を取り直すことができる
気後れせずに歩き出せる
まず生きていくことがあり
ありのままの自分から始めてみる

アップアンドダウンは
人生について回るもの
いずれ道が大きく開けるときが
あるはず
いずれ目の前が明るくなるときが
来るはず
そのときのために
愚痴を言うのでもなく
へこたれるのでもなく
早朝の町をたんたんと走り続けて
人生の山を越えて行こう

2005/03/12, 2005/07/12


詩集 水平線 目次

Copyright (c) Koichi Horiba, 2005