心にエンジン

堀場康一



見えない扉をさぐりあて
心にエンジンをかける
エンジンがスタートしても
心は容易に動き出さない
きのうと同じ場所を行ったり来たりして
ぼんやり空を仰ぎ見る
一体どこへ行こうというのか

旅人はいつも
明日を追いかけているわけでも
過去を回想しているわけでもない
足の向くまま歩き回ったり
決められた行路を辿ることもある
行く先を決めかねて立ち往生したり
その場にならないとわからないこともある

見えない扉を見つけ出し
心にエンジンをかける
そして心が動き出すのを待つ
やがて明け方の搭乗時間が来て
ぼくらの未来飛行がささやかに始まるまで
ひとときの雨宿り
梅雨明けが近い
2005/07/12


詩集 水平線 目次

Copyright (c) Koichi Horiba, 2005