そっとたたえたい
堀場康一
風を吹かせたいと思ったのはいつだったか
遠い昔の出来事のような気がする
ぼくは風に吹かれるままきょうも
夜明けの大通りを駆けて行く
ふらつかないよう
もたつかないよう
気を引き締めてステップを踏むと
ぼくの心はいつしか
大空をさまよいはじめる
そんなとき
好きな人をそっとたたえたい
と思うことがある
なぜだかわからないが
そういう気持ちになることがある
たたえるは
称えるであったり
讃えるであったり
ほめそやすわけではないが
たたえたい
と思うことがある
好きな人をたたえることで
なにか見返りがあるわけではない
たたえることで
ぼくの心がひととき安らかになる
それだけのことかもしれないが
そんなささやかなよろこびが
ひとつひとつ重なって
ぼくの日常がつくられていく |
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