心にシール

堀場康一



ぼくらは語ることに慣れすぎた
語ることで解決されたものは
まだほんの一握りなのに
語らないことの意味を忘れかけ
語ることに日々追われている
もちろん 語ることで心の安らぐことは多いけれど

ぼくらはからだを見下していないか
からかいの種にしていないか
ぼくらのからだは両親から授かったもの
ぼくらのからだは両親から受け継いだもの
どれ一つ貧しいものはなく
豊かさにみちている

心に虹色のシールを貼り 封をして
寄せ来るおしゃべりに さりげないユーモアで
繰り返されるからかいに 夕凪のような沈黙で
メディアの洪水に さわやかな朝の息吹で応えれば
心のいたみが遠ざかるかもしれない

な み だ ま と め て
は な い ち も ん め

潮騒がひびく海辺の昼下り
ぼくはかげろうになり
ひかりかがやく砂浜を駆けていく

付記

 この詩は、2006年5月13日付の日記の詩を加筆修正したものです。
2006/09/15


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