いのちの洗濯

堀場康一



0(ゼロ)と1(イチ)の間には
無数のかずがひしめいているのに
0か1のボタンを押して
人生の改札口を通過する人が
このごろ増えてきた
0か1を選択するのと
0と1の間の無数のかずを思いやるのと
どちらが人情家なのか
どちらが思慮深いのか
いちがいにいえないが
0か1のボタンを押すのがスマートで
0と1の間をうろつく姿は野暮ったいかもしれない

昼間のざわめきをくぐりぬけると
やがて夜のとばりが下りる
悲しいときは星空を見上げていよう
涙が宝石に変わるかもしれないから
切なくなったらラジオに耳を傾けよう
饒舌なおしゃべりに心の痛みがまぎれるから

ぼくは0と1の間を行き来しながら
いのちの洗濯をする
心地よい朝を迎えるために


付記

 2006/07/05付の日記 のなかの詩「いのちの洗濯」を加筆修正したものです。
2006/09/18


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