ア ー チ
堀場康一
蹴り上げたラグビーボールが
ゆるやかなアーチを描きながら
夕暮れの空を
ゴールめがけて飛行するあいだ
思いは光より速く
虹を往復する
もつれ合った人影は
紙コップの向こうで奮闘し
淡い存在を限りなくアピールする
緊張の持続は
日常を駆り立てるが
やがて安らぎの空間が
雪解けのように広がる
いつだって
どこだって
きっと
ささやかなしあわせは
つかめるさ
出会いはいつも
不定形にやってきて
赤ワインのように胸に染みる
スクランブルエッグから飛び出した
即席のコミュニケーションでも
愛や希望のアルプススタンドはある
季節のかおりにいとしさを覚え
新しい旋律が芽吹くとき
アーケードで即興芝居が始まる
ガラス色のカスタネットを打ち鳴らすと
埋もれた記憶が昇華し
着飾った街頭を
ストロボ写真のように駆けめぐる
高速道路の橋桁からぼくらの生を見届ける
魂の証人たち
春が耳元をするりと吹き抜ける
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