部 屋
堀場康一
一幕の というより半幕の芝居がおわって
コンクリートのカーテンがおりる
するとがらがら音がして
となりの窓から
窓という窓から
どこかで見たような
頭をぶつけたことのあるような
四角い部屋が顔を出す
足跡はといえば床いちめんに落ちていて
でこぼこしたぶかっこうなやつばかり
泣いているみたいな
おこってるみたいな
赤ん坊のものほしげな悲鳴が
背中のあたりにこだまする
それはあの朝もやの細い路地で聞いた
一日のはじまる合図だったかもしれない
テープを巻き戻して椅子にかけ
きのうのレッスンをくり返すには
かりかりひびきわたるお菓子と
熱い緑茶があれば十分だけれど
なまけものの魂がはたして
こころよく腰を上げるかしら
ふとんにもぐるのはまだ早いし
大声を張り上げるのはちょっと無理
空気をひっかいていらいらして
できればうぶ湯につかりたい気分
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