日の出まで
堀場康一
むらがる風
とけあう空
原っぱの向こうで
ゆれるアパートの明り
傍らを電車が駆け抜け
とおざかる季節
消えのこる影像
『流沙』の二人の主人公が再会するのは
たしか二年半ののち
砂漠の遺跡
銅貨の表裏くらいのすれちがいを盾に
あきれかえるくらいの日月
こちらとあちらで頬かむりして
忘れようとしたり
思い直してみたり
ピアノと考古学が
離れたりくっついたり
たどりついたところはどうやら
世界の始まり
にぎやかなバザール
淡い期待が暗がりにまぎれ
とうめいな声が耳元でささやけば
歩調はうなじの方へずれてくる
ジグソーパズルから抜け出したみたいに
もどかしさがふと頭をもたげ
取返しのつかない気分にさそわれても
筋書だけは事もなげに進行する
不思議
日の出まで五時間と少し
つぎはぎだらけのシュプレヒコール
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