堀場康一


ある日一せきの船がまたたく間に沈没して
男はひとりだけ海の中に取り残されました
男はまっ暗な海の底を
あてどもなくさまよいました
ほのかな光の輝きをさがし求めて
休まないで歩きつづけたのでした

数日後捜索隊の手によって
男は海面に漂っているところを
発見されました
なぜか男は子供っぽい無邪気な表情で
気持ちよさそうに眠りこんでいた
ということです



 詩集『ボストンバッグ』目次

 Copyright (c) Koichi Horiba, 1996