シャル・ウィ・ダンス?
堀場康一
ひんやりした朝の町はどこまでもクリアで
あたかも透明人間がそこいらで
おいでおいでをしているようで
ひょっとしてぼくも透明人間になりたいのかもしれない
薄明かりの東南の空に
細長い弓形の月が顔を出し
ひとときぼくはたわむれる
ぼくはあれこれ月に話しかけるが
月は返事をせず知らん振りしている
おまえが自分に問いかけ 自分で答えるがよい
自分で答えられないものを 他人に問いかけるな
月はそう言いたげだ
ぼくの行く先は自分で決めなくてはいけないが
自分ひとりの人生でないことはたしかだ
いつも大切な人のことを思い浮かべて生きてきたし
これからもそういう暮らしがつづくのだろう
ぼくのような手に負えない道化者でも
生きる気力はある
生きる時間はある
月に嗤われないように心の準備をして
足取り軽く走りつづけることができたら
沈んだ太陽がふたたび昇るように
やがて運が開けるかもしれない
ひんやりした朝の町はどこまでもナイーブで
あたかも妖精たちがそこいらで
“Shall We Dance?”を踊っているようで
いつかぼくも好きな人とダンスをしてみたい |
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