日展にて
堀場康一
展覧会の絵はお洒落だ
よそ行きドレスで身を飾り
潤いのある眼差しで誘惑する
まるでファッションショーの舞台裏に
さまよい込んだようだ
展覧会の絵は百面相だ
自慢したり
すねてみたり
みせびらかしたり
しょげかえったり
泣いたり
笑ったり
手を替え品を替え
展示室で即興芝居を演じている
絵と向き合っていると
あなたと話がしたくなる
遠いところにいるからといって
けっして届かないわけではない
大空を流れる雲がぼくの思いを
あなたのもとに運んでくれるかもしれない
絵と向き合うことは
あなたと向き合うことだ
絵に描かれたひとに
あなたの面影をそっと重ね合わせて
記念写真を撮っているような自分が
そこにいる
美術館を抜け出しても
ぼくの心はほんわかと
宙をさまよっている
はたして展覧会気分はいつまでつづくのか |
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* 2010/07/01 13行目「手を変え品を変え」を「手を替え品を替え」に修正しました。
詩集 水平線 目次
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