わたしのウチナー(沖縄)

堀場康一



エイヤー エイヤー エイヤー 舟漕いで
エイヤー エイヤー 島人(しまんちゅ)ぬ心意気

むかしこの島に基地はなかった
青い海と空と畑と森に囲まれて
わたしらは暮らしていた

十・十空襲で米軍機の無差別爆撃を受けたあと
まもなく苛酷な沖縄戦が始まり
日本兵と一緒に住民がおおぜい余儀なく命を落とした
一九四五年夏に戦争に負けてから
米兵が続々この島に乗り込んできた
米軍基地がここかしこに強制的に作られ
いつしか沖縄は基地の島になった
一九七二年五月十五日沖縄はアメリカから本土へ復帰したが
その後も米軍基地は居座っている
ベトナム戦争や湾岸戦争やイラク戦争のときも
米兵たちの戦闘機や軍艦がここから出撃した
そして沖縄では
米兵による少女暴行事件が起きたり
米軍ヘリコプターが大学校舎に墜落炎上したり
米軍装甲車が養護学校に無断侵入したり
いまも戦争と隣り合わせの日々がつづいている
なんでかねー

いまの若いもんにはわからんだろうが
おじぃやおばぁは知っている
青い海と空と畑と森に囲まれた
基地のない島 ウチナー(沖縄)
そういう島があったことを思い描いてほしい
イメージが湧かんかったら
おじぃやおばぁにいっぺー聞いてくれ
おじぃやおばぁが元気なうちにいっぺー聞いたらいいさ

むかしこの島に基地はなかった
青い海と空と畑と森に囲まれて
わたしらは暮らしていた

エイヤー エイヤー エイヤー 舟漕いで
エイヤー エイヤー 島人ぬ心意気

付記

詩「わたしのウチナー(沖縄)」。「ざわわ…」の季節。(2007/08/01付日記)
も合わせてご覧下さい。この詩のなかのウチナーグチ(沖縄語・沖縄ことば)について、説明を加えました。
2007/08/04, 2007/10/05


詩集 リトルバイリトル 目次

Copyright (c) Koichi Horiba, 2007