ぼくの歩みがのろいのは
遠くにいるきみの息吹を聞こうとして
飛行機雲の行方を追いかけていたから あるいは
渡り鳥の編隊に見とれていたからかもしれない
勢いよく走り行く電車から
ぼくはビルの町を一望する
空をつらぬくスパイラルタワーから垣間見る地球は
太古と同じリズムでゆるゆると回りつづけている
光明がさしてから歩き出そうというのでも
鎧戸があいてから踏み出そうというのでもない
どの街角の空間もあらかじめ解き放たれて
ぼくらが陽気な姿で現れるのを待っている
そんなあけっぴろげな空気に背中を押されて
一歩一歩前へすすんでいくのだろうか
橋の上からのぞき見る川面の景色のように
ぼくの心はたえず揺れているが
いつもの日常と思えばさほど心配はない
ぼくはきみと出会うために生まれたなどと
大仰にいわないまでも
ぼくがここにいるのは何かの理由があると思いたい
ちゃらんぽらんなぼくの人生でも
いつか収束点が見つかるはず
いつか目的地に着けるはず
あした秋の夢から目覚めたら
こんどはスロースタートで走り出そう
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